PS3「FRONT MISSION EVOLVED」が発売になりました。
かく言う島元、「FRONT MISSION」シリーズは非常に大好きでして、PS3タイトルとして「FRONT MISSION」の名が挙がった時は非常に嬉しく思ったものでした。ヴァンツァー(メカ)をカスタマイズする楽しみ。パイロットを育成する楽しみ。そして謎めく物語、程々に楽しめる難易度。シミュレーションゲームとしての完成度・自由度も高く、周回プレイしても飽きない、そんな心の名作シリーズでありました。
しかし。
PS3でこの度発売された「FRONT MISSION EVOLVED」は、シミュレーションゲームではなく、アクションシューティングゲームになっていました。
発売前のトレイラーも見ることは見たのですが、心の中に浮かんだのは、「やっぱり、駄目になってしまったか」という一言でした。
もちろん、買ってはいません。買うことも無いと思います。買うまでも無く、この「FRONT MISSION」は面白くないことが分かる。何故なら、このゲームは「FRONT MISSION」シリーズの面白かった部分をほぼ全て捨ててしまっているからです。
「FRONT MISSION」シリーズの面白さとは、何か?
それは、端的に言えば「時間と距離を無視した、現実にはあり得ないヴァンツァー操縦技術によって彩られるカッコいい戦闘描写」であったと僕は考えます。
例えば、遠距離攻撃(ミサイルなど)を主体としたヴァンツァーが、目標を攻撃した場合。
シミュレーションゲームですので、グリッドによって射程距離が定まります。多くの遠距離武器の場合、格闘・近距離兵器の射程外から攻撃を仕掛けることができます。ヴァンツァーの肩に設置された遠距離攻撃兵器からミサイルが飛び、目標は防御、あるいは回避行動をとり、何発が命中したか、どの部位にどれだけのダメージを与えられたのかが表示されます。
遠距離攻撃を行ったヴァンツァーは、そのターンにおいて反撃を受けることはありません。ここに、現実にはあり得ない、しかしゲームとしては中心に据えられる戦略としての楽しみと、遠距離攻撃の格好良さがあったのです。
これをリアルタイムのアクションシューティングに置き換えたらどうなるでしょうか。
遠距離攻撃をヴァンツァーが行った瞬間、恐らく敵目標にはミサイル警報が鳴り、ミサイルの発射地点からヴァンツァーの位置を特定した後、敵はミサイルを回避しつつヴァンツァーとの距離を一気に詰めてくるでしょう。ミサイルのホーミング性能や速度は分かりませんが、基本的に格闘・近距離兵器を併装できない遠距離兵器主体のヴァンツァーは、敵目標との間を詰められてしまえば反撃の手立てが無く、圧倒的に不利な兵装パターンとなるでしょう。
続いて、「FRONT MISSION」の華である(と勝手に僕が思っている)格闘兵器を主体にセットアップしたヴァンツァーを考えてみます。シリーズですと、ロッド、トンファー、スパイク、パイルバンカーなどがこれに当たります。
シミュレーションゲームにおける格闘兵器に特化したメカ、というのは、須らく「一撃必殺、即離脱」を繰り返すのが常套と考えます。その為、装甲や重量を極限まで抑え、敵目標が迂闊な隙を見せたターンに一気に隣接グリッドまで移動し、確実に効果的な一撃を与え、他の目標に包囲される前に離脱できるだけの素早さが必要です。
当然、格闘兵器で攻撃した際、敵からの反撃を受けるのですが、「FRONT MISSION」シリーズには様々なスキルがあり、反撃しようとする武器装着腕を破壊する「アームブレイク」、反撃時の機動性を下げて命中率を下げる「レッグブレイク」、相手の武器攻撃を0か全て命中にするという博打的なスキル「オール・オア・ナッシング」など、格闘ならではの利点を持つスキルが格好良く発動し、「反撃させる前にその腕を落とす」「近距離でバラ撒かれた反撃を全弾回避する」などという、現実には起こり得ない演出が爽快さを持っていました。
さて、これを実際にリアルタイムアクションシューティングに置き換えてみると。格闘武器主体のヴァンツァーは、敵目標に接近している最中は、敵目標からの攻撃を受け続けなくてはなりません。また、格闘武器が当たり得る射程まで接近したとすれば、敵の反撃を完全に回避することなど不可能です。
無意識のうちに敵目標を近距離兵器装備と仮定してお話していますが、実際問題、現実の戦闘において、スパイクやパイルバンカー、トンファーなどを機動兵器に搭載させたところで、マシンガンやアサルトライフルの集中砲火を受ければ、格闘武器が射程に入る前にダメージを喰らうことは大前提であり、圧倒的に不利な兵装であると言わざるを得ません。
そうなのです。シミュレーションゲームだったからこそ、格闘・近・遠距離それぞれの武器に使いどころや見せ場、格好良さがあったのです。リアルタイムにしてしまえば、格闘戦距離をもカバーし得る近距離武器が圧倒的に有利なのです。
さらに、その近距離武器ですら、シリーズ特有の面白みを捨て去ってしまいました。それは、武器の両手装備です。
これまでのシリーズでは、近距離武器を両腕に一挺ずつ装備すると、ゲーム内では「スイッチ」という特別なスキルを発揮することができました。1ターンに両手の武器でそれぞれ1回ずつ、都合1ターンに2回攻撃することが可能になるのです。
これをリアルタイムアクションシューティングでやってみるとすると……?こんなことが可能でしょうか?仮に両手に武装したとしても、2挺を同時にコントロールするなんてことはきっとできないでしょう。一時的に周囲の時間の流れがゆっくりになって、その間に両手の武器を切り替えて攻撃する……というシステムも考えられなくはないですが、もしそれが可能だとすれば、その仕組みを使って格闘武器、遠距離武器による攻撃をも回避することが可能になってしまいます。これではただでさえ汎用性の高い近距離武器が、圧倒的に有利になってしまいます。
こうした、「超人的な」スキル発動の応酬と、グリッド移動とターン制という、距離と時間に現実にはあり得ない制限のかかった世界だったからこそ、自分のヴァンツァーのセットアップにこだわりを持てたのであり、戦闘シーンも格好良かった。これこそが、自分の理想のメカなのだ、と思えたのです。
全てがリアルタイムアクションシューティングになった「FRONT MISSION EVOLVED」の戦闘シーンは、ヴァンツァー同士がただ追いかけ合い、殴り合い、撃ち合っているだけで、何も格好良くありません。昔々に「ロボクラッシュ」というPCゲームがありましたが、そのゲーム画面を見たような気持ちになりました。
結論。戦闘シーンがマンガっぽく格好良いから「FRONT MISSION」は面白い。それを捨てた「FRONT MISSION EVOLVED」が面白いわけがない。ヴァンツァーも「次世代機でコレ?」みたいなショボさ。もっとヴァンツァーを見た瞬間に「おおお、これがPS3のヴァンツァーか!」って言わせてくれるくらいのものが欲しかった。PS版のヴァンツァーに、バンプとリフレクションマッピングしただけみたいなの、ホントダサい。
そんなわけで、心からシミュレーションゲームとしての「FRONT MISSION」復活を心から願って止みません。シリーズのファンの1人として、心から願っております。