速水 厚志の日記 4

速水です。

今、目の前には便箋があって、僕は机に向かっています。

――遺書。

戦車兵になるって、何だろう。こういうことなんだろうか。

ほんの数時間前、善行司令に遺書を書くよう命じられてからずっと、僕はこうして便箋に向かっているけど、何を書いていいのか分からない。

多分、遺書に意味なんて無い。もし、僕がこの戦争で死んで、幻獣に熊本を制圧されたら、その頃は僕の家族も幻獣に殺されている。熊本だけじゃないかもしれない。そのまま九州全土を制圧されて、次は下関――。

学徒の徴兵拒否が、東京や大阪などの大都市では起こったと聞いている。この最前線を知らない、離れた場所にいるから、今この熊本で何が起ころうとしているかが分からないから、そんなことが言える。

僕には良く分からない。

戦う理由も、戦うことに反対する理由も。

遺書用の便箋は、白紙のままだ。

―――――

翌日。午前中の講義の後。いつものようにお昼を誘おうと思って、若宮さんに近付いた。

若宮さんは、深刻な顔をしていた。

「はじめての実戦ですな。……失礼いたします……せんえつながら、先任下士官として個人的に御助言いたします。」

僕は黙って頷いた。

「トイレにいっておいた方が、恥ずかしい思いをせずに良いと思います。それからコックピットに乗り込む時、歯を噛みしめていれば、整備員どもも不安がらずにすむでしょう。そうすることをお勧めします。それから……十翼長。」

若宮さんは、真っ直ぐに僕の目を見て、言った。

「血を吐き、仲間の内臓を踏みにじっても戦ってください。」

「……最後の勝利を、我々が掴むために。」

「たとえ我が隊や我が国が全滅しようと、どこかで男と女、2人生き残れば、……守り切れば、我ら人類の勝利です。」

「十翼長。それだけを覚えておいてください。」

「我らが血の涙で鍛え上げた戦術の数々は、ただその目的のためにあると。」

―――――

この日。

僕はお昼を食べなかった。何も食べたくなかった。

若宮さんは、どうしてあんな顔をしたんだろう。若宮さん自身は、もう4年もスカウト兵として戦ってきているのに。

分からない。

必死に士魂号の耐G訓練をして、何もかも忘れようと思った。

速水 厚志の日記 3

速水です。

ようやく分かりました。「Hな雰囲気」になるには、好きあっている者同士がそのエリアで「二人っきり」になると発生するようです。

逆に言えば、僕が若宮さんを連れ回し、事あるごとにHな雰囲気に持っていき続ければ、若宮さんが原さんに近付くことはできず、恋愛も成立できない。名付けて、若宮監禁大作戦!

何か道を踏み外してきたような気もするけど、僕はこれでも士魂号のパイロットなんだ。十翼長なんだ。いいさ、やってやる。

都合のいいことに、パイロットの僕とスカウト兵の若宮さんは1組。整備班の原さんは、当然2組。授業が終わったら即、若宮さんをお昼に誘う。名付けてランチ拉致!

で、午後からの授業が終わった後は、若宮さんはグラウンドでスカウト兵の訓練をするし、僕は士魂号の整備、原さんは善行司令と打ち合わせや物資陳情で忙しい筈。これで、若宮さんと原さんの接点を徹底的に絶つ!

―――――

ところが。整備士のみんなが増えたこともあって、お昼を二人きりで食べることはできても、食べ終わると他のメンバーがぞろぞろ入ってきていて、なかなかHな雰囲気になることができない。気付けば、整備班の女子に僕が「付き合ってください」と告白されていたり、その間に他の女子が若宮さんに近付いていってたり。

でも、僕が女の子に言い寄られて困っているところへ若宮さんが割って入ってくれたりして、それはそれで、何か嬉しかったりするんだけど。

何とかして二人きりになりたい!

そう思って、知能ランクSの速水頭脳でもって導き出した、最高の場所はズバリ、ここだ!

男子トイレ。

ここなら女子はまず入ってこないし、何より狭いからそんな大勢が入ってくるなんてこともないし。フハハ、見たか速水頭脳の恐ろしさを!結局、若宮さんだって男。快楽には逆らえないカラダの筈だ!

そして、今日の僕はもう一味違う。こっそりと、プールへの入場チケットを入手しておいたのだ。このチケットがあれば、日曜日にデートの約束を取り付けることができる。若宮さんと二人でプール……。フフフ、完璧だ、完璧すぎる!(まだ3月ですが。熊本は3月でもプールに入れるのでしょうか)

わ、若宮……さん。日曜日、僕とどこかに遊びに……行ってくれませんか。

「よし、俺の力を見せてやろう。」

え、力って何ですか。で、でも何か喜んでくれたみたいで良かった。今週末の日曜日が楽しみだ。日曜日に召集がかからなければいいけどな……。幻獣も日曜日は休んでくれるといいんだけどな……。

そんなことを考えていたら、僕と若宮さんの人間関係が最高に達してしまいました。

「運命の友」だなんて……。なんか、恥ずかしい。

僕が恥ずかしそうにしていたら、今度は若宮さんの方から話し掛けてきた。

「あー、聞いて欲しいんだが。」

どんな話かな?(まさか、またハッピ着てメガホン持て、とかじゃ……)

「えーと、その……。一緒に歩こう。」

な、なんだ……。そんなの、全然OKですよ。意外と可愛い人なんだなぁ、若宮さんって。もちろん、喜んで受け入れますとも。

でも若宮さん、良く考えたら、ここ、男子トイレですよ?「一緒に歩く」ったって……狭いし……。あれ?あれかな?もっとトイレの奥の方に行こう、ってことなのかな?

そう思って、少し奥の方へ移動してみた。

(若宮は腕を組んで空を見た。)

「こういう時は、表情に困る……」

(空を見たまま、顔が崩れた。)

あの……若宮さん?ここ、男子トイレの中ですから、空なんて見えませんよ?

ともあれ、喜んでくれてるみたいで良かった……と思っていたその時、既に暗黒の使者が近付きつつあったのです。

まさかの、ブータ(猫)が男子トイレ入り。お陰で折角の「Hな雰囲気」が普通の雰囲気になってしまった!

「ニャー」

(……お、おのれー)

……お、おのれー。何が「ニャー」じゃ!ぜってー狙って入ってきただろ!このエロ猫!

ちなみにその後、男子トイレの中がどうなったかと言うと。

さらに石津 萌(女子)が追加乱入。ブータは出て行かないし、この狭い男子トイレの中で何が起こってるんだ一体全体総カオス状態。

ちなみに、ブータ(猫)ですが。数日後、逆の痛みを知ったようです。

猫も、「……お、おのれー」って言うんだね。

―――――

人が増えて、僕は若宮さんに夢中で、ブータの行動は意味不明で面白くて。

そんな高校生活みたいな雰囲気の中、夜前に召集がかかり、善行司令から全員に通告が為された。

明日より正式に5121小隊は軍属となり、数日後に実戦に配置される。そういう通告だった。

それから、善行司令は言った。パイロットとスカウト兵は遺書を書くように、と。

速水 厚志の日記 2

こんにちは。速水です。

今日は朝から大忙し。街中で原さんという女性に声をかけられたと思ったら、いきなり善行司令の所へ連れて行け、なんて言われて案内したんだけど、要は、整備士・補給師団がうちの基地にも到着したってことだった。

さっき出会った原さんは、整備士・補給師団のリーダーなんだって。きびきびとした動作、冷静で鋭い雰囲気。あっという間に士魂号のメンテナンスベースを設置しちゃう辺り、相当なやり手の女性みたい。いつの間にか僕らも設営を手伝わされてたんだけど、それも何か自然で。

そりゃそうだよね。パイロットなんだから。整備の済んでない機体で出撃して、死ぬなんて嫌だもの。

ただ、若宮さんが妙に興奮した様子だったのが気になる。まさか……とは、思うけれど。

滝川が善行司令と少し話をしたらしいんだけど、設営後、パイロットにはすぐ休息を取らせろ、っていう司令の命令が出ていたみたい。パイロットって大切にしてもらえるんだな、と喜んでいいのか。今にも幻獣が押し掛けてきそうな状況だ、ということと理解していいのか。実際、戦地に出向くのは、整備士じゃなくてパイロットである僕らだからなのか。なんか、もう、すごく複雑な気分。

おかげで1組の教室はいっぱいになって、整備班として入ってきたメンバーは、2組の教室で授業をすることになった。最初は教官3人にパイロット候補4人だったこの基地も、今は2クラス分の同じ年代の子たちで賑わっている。

そして、その全員が3機の士魂号がちゃんと戦えるための準備をしてくれる仲間で、そのみんなの努力を活かすも殺すも、僕ら4人のパイロット次第なんだって思うと、責任が重く感じられてきた。芝村はそんなことでは死ぬぞ、とか言うし、滝川はいつも通りやればいいんじゃねーの、って言うし、壬生川はむしろ私はもっとしっかりしなくてはと思います、なんて言う。

――僕は、ただ、戦うことが怖くなってきている。

午後から、原さんに教わって士魂号の整備の仕方を学んだ。士魂号の整備は、パイロット側の調整で整備される部分と、担当整備士の調整で整備される部分の両方が終わって、動作テストをして、それで初めて戦闘に出られるということらしい。つまり、これまでみたいに、ひたすら自分の能力を磨けばいいんじゃなくて、士魂号のパラメータ調整やテストもこまめにやっていかないと駄目だ、ってこと。

神経接続、照準装置、反応速度、対G訓練……。なかなか上手くいかない。できるだけのことはしておきたいと思うけど、思っていたより難しい。

結局、帰りが物凄く遅くなってしまった。重い足取りで校舎を後にしようとしたら、校門前で若宮さんに出会った。神様、ありがとう!今日一日頑張ったご褒美に、若宮さんとの一時を用意してくださったんですね!

大喜びで若宮さんに話し掛けに行くと、若宮さんの顔色が優れなかった。

「どうでもいいがな……うちの女どもは、変な……いや、癖の強い女が多すぎると思わんか。」

ま、まぁ、確かに個性的な子が多いですよね。

「……健全な男子としては、もっとこう、なんだかな。可憐な人が欲しいんだがな。」

な、何言ってるんですか。僕が傍にずっといるじゃないで……

「……やっぱり、原さんだろうか。」

やっぱり、って何がやっぱりですか。こ、こないだの、あの、Hな雰囲気のヤツとか、一体何だったんですか!

意気消沈する僕を尻目に、若宮さんは更に続けた。

「決めたんだがな。……まあいい、やって後悔したほうがいい。」

「どうだ、悪い遊びをやらんか。」

え。先日、教えてくださると仰っていた「悪い遊び」、ですか?この流れでどうしてこの話が出てくるのだか、全く解せないんですけど……。で、でも、若宮さんとご一緒できるなら、速水は何だってやります!

「そうか。じゃあ、このハッピを着ろ。」

は?

「メガホンもだ。」

あの、若宮さん、これって一体……

「……なにって、決まっているだろう。原 素子ファンクラブだ。……て、おい。逃げるな!」

僕は泣きながらその場を逃げ出した。若宮さんのバカ、若宮さんの大バカ!僕の気持ちも知らないで……原さんのファンクラブなんて、一人で勝手にやってくださいッ!

その晩、僕は決心した。原さんには心を許さないことを。そして、何としても若宮さんを僕に振り向かせて見せる、って。

僕も男だ。若宮さんも男だ。だったら、若宮さんが求めているものくらい、僕にだってすぐ推測できるんだから!

泣いたら負けのような気がして、僕は息巻きながら布団に潜り込んだ。負けない。ぜってーに負けねーんだからなッ!

速水 厚志の日記 1

こんにちは。僕、速水 厚志です。

って、自分の日記の最初の一文が自分の自己紹介になるのも、何だかおかしな気がする。取り敢えず、僕は対幻獣の軍隊(って言っていいのかな。でも「十翼長」なんていう位階が僕には付いてるし、やっぱ軍隊だよね)の、5121小隊に所属する、4人の戦車兵のうちの1人。3号機のパイロット。

戦車って聞くと、キャタピラに砲塔が付いてるのを想像するけど(もちろんそういう戦車もあるんだけど)、僕らが乗るのは人型戦車と言って、言ってみればロボットアニメの主人公が乗るようなもの。

壬生川が乗る1号機、滝川が乗る2号機はそれぞれ単座なんだけど、僕と芝村が乗る3号機だけは複座になってる。正式には「士魂号M突撃型 複座仕様」っていうんだけど、複座には有線式のミサイルポッドが搭載されているのが特徴。単座だと、手に持ったアサルトライフルやマシンガンで1体の幻獣しか狙えないけど、ミサイルポッドは一定の射程内全部の幻獣に向かって飛ばすことができる。要は、僕ら3号機が先行して敵を引き付け、ミサイルポッドで射程内の幻獣を撃破、ミサイルを回避した残りの幻獣を、壬生川・滝川がタイマンで撃破していく、という戦い方を前提にした編成。

つまり、僕らの乗る3号機が小隊の戦局如何を左右する、大事な役、ってこと。操縦士である僕は、的確に敵の行動を予測し最善の位置取りをして、砲手である芝村は、有線式ミサイルの対象軌道を的確に計算して出来るだけ高い命中を目指す。その点、芝村は電子戦が得意みたいで、彼女の的確なミサイルコントロールには驚きを禁じ得ない。天才、っていう噂だけど、本当に天才みたいだ。考えていることが、みんなより遥かに先のことを考えてる。

そうそう、どうして人型なのかについて、戦術教官の坂上先生が言ってた。

「走る速度は車以下、的の大きさでは戦車以上。使える武器の大きさは重量比で、いかなる車両にも劣る。それが、あなた方が乗る最強の兵器の能力です。強いのは、性能ではありません。戦術です。……戦車は動いて射撃するしか出来ません。武器を捨てて接近しキックすることも、横にジャンプすることも、壁を昇ることも、後ろに剣で攻撃することも出来ません。あなた方は性能で戦うのではない。戦術で戦うのです」

芝村は、こういうのは軍隊特有のマインドコントロールだ、と鼻で笑っていたけど、僕にはそうは感じられなかった。結果的にそうなるのかもしれないけど、きっと坂上先生は、僕らの不安や恐怖を和らげるため、そして戦場において冷静さを保つため、一生懸命授業をしてくれているのだと思う。

教本での1週間と、模擬戦闘を6回。これが僕らに教えられた全て。こんなので本当に幻獣と戦えるのか、不安で堪らない。

―――――

不安がまた一つ増えた。司令官が到着した。善行百翼長。この人は僕らと年齢は変わらないけれど、唯一、既に軍事学校を卒業してきた人だ。言うことが物凄く厳しい。同行してきたスカウト(戦車随伴兵)の若宮さんに、「こいつらを3日で使える戦車兵にしろ」なんて言う。

でも、実際に善行司令と話をしてみると、多分、この人が一番みんなのことを考えてるんだ、って思った。物凄く頭がいい。常に先のこと、先のことを考え終えているみたいだ。司令を信頼しなきゃ。ぶっきらぼうで無茶を言うのは、きっと、誰にも死んで欲しくないからなんだ。

―――――

体力を鍛える為に、若宮さんと一緒にトレーニングをさせてもらっている。

若宮さんはスカウト兵としての実戦経験が4年もある。だから、僕らより断然先輩なのだけど、階級は僕の方が上になるので、いつもかしこまった話し方で接してくれる。年齢はそんなに変わらない筈なのに、ずっと大人びて見えるのは、どうしてだろう。

今日は、いつもより遅くまでトレーニングをしていたら、若宮さんがやってきた。普段の話し方と違って、いきなりタメ口だった。

「19時を回っているから、勤務時間外だし、タメ口でいいだろ」、だって。これが普段の若宮さんなんだ、って思った。

帰り際、僕の首を捕まえて、「今度、悪い遊びを教えてやる」って言って、笑って帰って行った。悪い遊びって、何だろう。

あと……

僕は、どうしてこんなにドキドキしているんだろう?

―――――

ずっと若宮さんとトレーニングをしている。最近は、お昼も屋上で二人で食べるようになった。若宮さんは物凄く良く食べる。いつも3人分のお弁当をお昼に食べてる。

僕は、と言えば、若宮さんとお昼を一緒にできるのが楽しくて、何を食べたか味も覚えていない。

どうしてしまったんだろう、僕は?

―――――

今日、いつものようにトレーニングしていたら、若宮さんに突然不思議なことを言われた。

「親友でいよう。結婚は死が二人を別つまでって奴だが、親友は、例えどちらかが死んでも親友だ。俺は死ぬまでお前を覚えていよう」

びっくりした。若宮さんにそんな風に思ってもらえるなんて、思ってもみなかったから、とても嬉しかった。

それで……。

そのまま、何となく二人でいたら、変な雰囲気になってきちゃったんだ。

理由は分からないけど、Hな雰囲気になっちゃって、びっくりして、そしたら、若宮さんが近付いてきて……。

「……ん?筋肉か。……おいおい、気持ち悪いはないだろ。こんなにいいのに。ほら、ほら。」

「……ん、あー、誰かが見ているような気がするが……まあ、いいか。……そこは、こうやるんだ。こう……うまいぞ。」

こ、校庭の横で……とんでもないことを、しちゃい、まし、た……。

えへへ。何か幸せです。僕。

噂に偽り無し。「高機動幻想ガンパレード・マーチ」

相方のWii「ファイアーエムブレム 暁の女神」が5周目(難易度ハード)に入り、まだ当分PS3が立ち上げられなさそうな島元です、こんにちは。

余りに相方のFE熱が長続きするものだから、PSPのゲームアーカイブスで何かプレイしてみようか、と思っていたら、噂のシミュレーションゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のダウンロード販売が開始されていたので、こちらをプレイしてみることにしました。

「噂の」、というのはWikipediaに詳細がありますが、簡単に言うと「アルファシステムという会社が企画開発したが、SCEが『これは売れないゲーム』と決め付けて、広告費0円・プレス数も少なく制限されて発売に及んだが、雑誌『電撃PlayStation』がこのゲームの革新的な内容に注目して何号にも渡って特集記事を組んだところ、ネット上での口コミなどでその革新性がゲーマーに伝播し、販売へと繋がった。その後、アニメ化や続編発売などを経て、現在でも人気の高いゲームの1つとなった」、というお話。

この革新性を持ったゲームシステムが、後にアルファシステム開発のPS2『新世紀エヴァンゲリオン2』に継承されたことからも、当時如何にとんがったシステムであったかが良く伺えると思う。って、PS2『エヴァ2』やってない人には分からない話だよね。

大きく、アドベンチャーパートと戦闘パートにゲームが別れているんだけども。このアドベンチャーパートは、主人公以外の全員が固有のAIルーチンで動いていて、主人公や他の登場人物AIとのコミュニケーションによってルーチンが様々に変化していき、あたかも本当に人同士が影響し合っているようにして物語が変化しつつ進んでいく、というもの。

コミュニケーションにしても、単に相手との会話選択だけではなくて、その場の雰囲気、相手との距離、アイコンタクトなど、ゲームと言うには余りに詳細な情報を元に構築されたシステムなので、「たかがゲームのAI」とタカを括ると痛い目に遭います。例えば「いきなり相手のすぐ近くに近付くと嫌がられる」とか、「相手からの会話に対する反応がパターン化してくると、相手が自分に飽きてくる」とか。ただでさえ現実の人との距離の取り方に四苦八苦しているのに、非現実でも同じようなことに悩まされるなんて、なんて鬱無職に厳しいゲームなんでしょうか(笑)。

今しがた、コミュニケーションのAIシステムの複雑さを述べましたが、複雑なのはコミュニケーションだけではありません。世界設定、人物設定、物語に含まれる情報量も異常なまでに緻密で、1回のプレイでは到底把握しきれないくらい(これはわざとそうなっていて、1周目を何らかの形でクリアすると、2周目からは全くゲームの様相が変わる……とか。まぁ、若干ネタバレであります)。

物語の舞台は地球です。「黒い月」と呼ばれる謎の物体が出現し、幻獣と呼ばれる謎の生命体(人類の天敵)の侵略を受け、人類は抗戦も空しく滅びに瀕しています。人間が生き残っているのは、南北アメリカの一部、南アフリカの一部、そして日本のみ。まさに人類は絶滅の危機に瀕していました。

そして、遂に幻獣が九州に侵攻を開始。九州での交戦で自国の大半の戦力を喪失した日本は、ある決定を下します。それは、熊本に拠点を置き、戦力となり得る兵員を育成すること。そして、その育成までの時間稼ぎとして、14~17歳の普通の少年少女たちを徴兵し、即席の軍隊を編成。ゲームが開始される3月1日から幻獣が自然休戦期に入る5月10日までの間2か月、この熊本拠点の防衛に当たらせる、というもの。

正直、酷い扱いです。主人公が属する5121小隊は、接収された高校校舎において、人型戦車に搭乗するパイロット4人への教本・及び実機による指導がたったの1週間(通常は6ヵ月とのこと)。その後、司令官・整備士・補給師団(これも全員学徒。しかも小学生とか混じってる)が到着。1週間で仮設基地を設営、実機のメンテナンスを経て、いきなり実戦に放り出されるという、絶望的に即席な構成です(しかも教官以外が全員徴兵された学徒兵)。そのうちのパイロットの1人が、主人公である速水 厚志。普通の人間で、銃に触れたこともない、ただの少年です。補給師団の到着時に「オペレーターが配属された」と司令官に言われ、「オペレーターって何ですか?」と聞くくらい、戦争の何たるかを知らない子たち。

当然、プレイヤーである自分自身も何の事だか分かりませんから、この展開はチュートリアルを兼ねているのですが、非常に分かりやすいチュートリアルでありながら、徐々に事態の深刻さやら切実さが伝わってくる見事な構成で、あっという間に引き込まれてしまいました。

しかし、物語はとてもあっけらかんと進みます。何たって14~17歳。恋に憧れたり、ちょっとHなビデオの貸し借りをしたり、噂話や、机の中にラブレターが入ってた!とか、甘酸っぱい青春の日々が展開されます。

基地を設営した場所が高校の校舎だけに、召集のサイレンさえ無ければ、普通の高校生活のよう。

今日から、このゲームの主人公、速水 厚志となって、プレイ日記を付けて行こうと思います。