速水です。
ようやく分かりました。「Hな雰囲気」になるには、好きあっている者同士がそのエリアで「二人っきり」になると発生するようです。
逆に言えば、僕が若宮さんを連れ回し、事あるごとにHな雰囲気に持っていき続ければ、若宮さんが原さんに近付くことはできず、恋愛も成立できない。名付けて、若宮監禁大作戦!
何か道を踏み外してきたような気もするけど、僕はこれでも士魂号のパイロットなんだ。十翼長なんだ。いいさ、やってやる。
都合のいいことに、パイロットの僕とスカウト兵の若宮さんは1組。整備班の原さんは、当然2組。授業が終わったら即、若宮さんをお昼に誘う。名付けてランチ拉致!
で、午後からの授業が終わった後は、若宮さんはグラウンドでスカウト兵の訓練をするし、僕は士魂号の整備、原さんは善行司令と打ち合わせや物資陳情で忙しい筈。これで、若宮さんと原さんの接点を徹底的に絶つ!
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ところが。整備士のみんなが増えたこともあって、お昼を二人きりで食べることはできても、食べ終わると他のメンバーがぞろぞろ入ってきていて、なかなかHな雰囲気になることができない。気付けば、整備班の女子に僕が「付き合ってください」と告白されていたり、その間に他の女子が若宮さんに近付いていってたり。
でも、僕が女の子に言い寄られて困っているところへ若宮さんが割って入ってくれたりして、それはそれで、何か嬉しかったりするんだけど。
何とかして二人きりになりたい!
そう思って、知能ランクSの速水頭脳でもって導き出した、最高の場所はズバリ、ここだ!

男子トイレ。
ここなら女子はまず入ってこないし、何より狭いからそんな大勢が入ってくるなんてこともないし。フハハ、見たか速水頭脳の恐ろしさを!結局、若宮さんだって男。快楽には逆らえないカラダの筈だ!
そして、今日の僕はもう一味違う。こっそりと、プールへの入場チケットを入手しておいたのだ。このチケットがあれば、日曜日にデートの約束を取り付けることができる。若宮さんと二人でプール……。フフフ、完璧だ、完璧すぎる!(まだ3月ですが。熊本は3月でもプールに入れるのでしょうか)

わ、若宮……さん。日曜日、僕とどこかに遊びに……行ってくれませんか。

「よし、俺の力を見せてやろう。」
え、力って何ですか。で、でも何か喜んでくれたみたいで良かった。今週末の日曜日が楽しみだ。日曜日に召集がかからなければいいけどな……。幻獣も日曜日は休んでくれるといいんだけどな……。
そんなことを考えていたら、僕と若宮さんの人間関係が最高に達してしまいました。

「運命の友」だなんて……。なんか、恥ずかしい。
僕が恥ずかしそうにしていたら、今度は若宮さんの方から話し掛けてきた。

「あー、聞いて欲しいんだが。」

どんな話かな?(まさか、またハッピ着てメガホン持て、とかじゃ……)

「えーと、その……。一緒に歩こう。」

な、なんだ……。そんなの、全然OKですよ。意外と可愛い人なんだなぁ、若宮さんって。もちろん、喜んで受け入れますとも。
でも若宮さん、良く考えたら、ここ、男子トイレですよ?「一緒に歩く」ったって……狭いし……。あれ?あれかな?もっとトイレの奥の方に行こう、ってことなのかな?
そう思って、少し奥の方へ移動してみた。

(若宮は腕を組んで空を見た。)
「こういう時は、表情に困る……」
(空を見たまま、顔が崩れた。)
あの……若宮さん?ここ、男子トイレの中ですから、空なんて見えませんよ?
ともあれ、喜んでくれてるみたいで良かった……と思っていたその時、既に暗黒の使者が近付きつつあったのです。


まさかの、ブータ(猫)が男子トイレ入り。お陰で折角の「Hな雰囲気」が普通の雰囲気になってしまった!

「ニャー」

(……お、おのれー)

……お、おのれー。何が「ニャー」じゃ!ぜってー狙って入ってきただろ!このエロ猫!
ちなみにその後、男子トイレの中がどうなったかと言うと。

さらに石津 萌(女子)が追加乱入。ブータは出て行かないし、この狭い男子トイレの中で何が起こってるんだ一体全体総カオス状態。
ちなみに、ブータ(猫)ですが。数日後、逆の痛みを知ったようです。

猫も、「……お、おのれー」って言うんだね。
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人が増えて、僕は若宮さんに夢中で、ブータの行動は意味不明で面白くて。
そんな高校生活みたいな雰囲気の中、夜前に召集がかかり、善行司令から全員に通告が為された。
明日より正式に5121小隊は軍属となり、数日後に実戦に配置される。そういう通告だった。
それから、善行司令は言った。パイロットとスカウト兵は遺書を書くように、と。